3秒サマリー 水素を大きく使う前に、燃料としてどこまでの不純物を許すのかを決める段階に入っています。JERAなど5者は、NEDO委託事業として2026〜2027年度に水素品質の技術試験と国際標準化の準備を進めます。発電用水素を見る時は、調達量だけでなく品質規格が設備・コスト・契約にどう効くかを追う必要があります。

要点

  • JERA、JH2A、産総研、JPEC、ENEOSの5者が水素品質の研究開発を始めます。
  • NEDOの水素サプライチェーン技術開発事業に採択されました。
  • 研究期間は2026年度から2027年度までです。
  • 模擬ガス送気試験、実エンジン燃焼試験、規格項目・閾値の検討を行います。
  • 発電用水素では、価格や量だけでなく品質条件の確認が重要になります。

まず、何が起きたのか

JERAは7月24日、JH2A(水素バリューチェーン推進協議会)、産総研、JPEC、ENEOSと、水素品質の国際標準化に向けた研究開発を実施すると発表しました。

この研究開発は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業」の研究テーマとして採択されています。研究期間は2026年度から2027年度までです。

目的は、大規模なCO2フリー水素サプライチェーンをつくる前提として、発電や熱利用などの工業用途で使う水素に、どの成分をどこまで認めるのかを技術的に確かめることです。

これは何を意味するのか

今回の発表は、水素利用が「使うかどうか」から「どんな品質なら安全に安定して使えるか」へ進んでいることを示します。

水素は、つくり方や運び方によって微量成分が変わります。JERAの説明では、副生水素、MCH(メチルシクロヘキサン。水素を液体で運ぶための有機化合物)由来の水素、アンモニアクラッキング由来の水素には、有機化合物、硫黄化合物、アンモニアなどが微量に含まれる可能性があります。

発電設備に入れる燃料では、微量でも設備への影響を無視できません。燃焼の安定性、配管や機器への影響、保守頻度、計測方法が変わるためです。品質規格が固まると、将来の燃料調達契約や受入設備の仕様にも関係します。

まだ決まっていないこと

今回決まったのは、研究開発の開始と役割分担です。国際規格そのものが決まったわけではありません。

JERAは模擬ガスの送気試験を担当します。産総研は実エンジンを使った燃焼試験を担当します。ENEOSは国内外の動向を踏まえ、規格項目や閾値を検討します。JPECは技術的な裏付けに基づく水素品質規格案を策定し、JH2Aは国際標準化に向けた戦略をつくります。

つまり、これから確認するのは「どの不純物が、どの濃度で、どの機器にどの程度影響するのか」です。発電事業者にとっては、研究成果が設備仕様、受入検査、燃料契約のどこまで反映されるかが次の関心点になります。

公式資料で見るポイント

見る項目今回わかっていること追加で見たいこと
研究期間2026〜2027年度途中成果の公表時期
参加者JERA、JH2A、産総研、JPEC、ENEOS電力会社・需要家側への展開
試験内容模擬ガス送気試験、実エンジン燃焼試験対象設備、試験条件、評価指標
規格づくり規格項目・閾値の検討、国際標準化戦略ISOなど国際標準化の具体ルート
電力への関係水素・アンモニア利用火力の前提条件受入設備、保守、燃料契約への反映

発表文では、2023〜2025年度の先行研究で、発電や熱利用などの工業用途に適した水素品質の規格案を策定したとされています。今回の研究は、その案を国際標準化につなげるための技術的な裏付けを取る段階です。

次に見るポイント

まず見るのは、研究成果がどの形で公開されるかです。品質規格は、現場で使える測定方法や検査手順まで見えないと、契約や設備設計に落としにくくなります。

次に、対象となる水素の種類です。副生水素、MCH由来、アンモニアクラッキング由来では、含まれやすい微量成分が異なります。どの製造・輸送ルートを前提にするかで、燃料調達の自由度も変わります。

最後に、国際標準化の進み方です。日本側で規格案をつくっても、海外サプライヤーや利用国とそろわなければ、大規模な取引では使いにくくなります。発電用水素の普及を見る時は、技術実証と標準化をセットで追う必要があります。

結論:水素は量の前に品質をそろえる段階

今回の研究開発は、水素を発電燃料として広げる前に、品質のものさしをそろえる動きです。次に注目したいのは、2027年度までの試験結果が、燃料契約と設備仕様にどうつながるかです。


用語ミニ辞典

用語意味
NEDO新エネルギー・産業技術総合開発機構。エネルギーや産業技術の研究開発を支援する国の機関。
水素品質規格水素に含まれる成分や許容範囲を定める基準。安全性や設備影響の確認に使う。
副生水素石油精製や化学プロセスなどで、副産物として発生する水素。
MCHメチルシクロヘキサン。水素を液体で運びやすくする有機ハイドライドの一種。
アンモニアクラッキングアンモニアを分解して水素を取り出す方法。水素輸送・利用の選択肢の一つ。
国際標準化複数の国や企業が共通して使える規格にすること。取引や設備設計の前提になりやすい。

出典:

  • JERA「水素品質の国際標準化に向けた研究開発を開始 ~NEDO委託事業に採択~」(2026-07-24)
  • JERA「水素の品質規格体系の構築に向けた研究開発を開始」(2023-02-13)

出典・参考情報

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