3秒サマリー EV充電の費用対効果は、双方向充電だけで決まるわけではありません。Nature Energyの欧州モデルは、V1G(車から電力を戻さず、充電時刻だけを賢く動かす方式)が年190億〜420億ユーロ、約3.3兆〜7.4兆円(1ユーロ175円換算)のシステム費用削減を生み得ると示しました。日本でも、まず「いつ充電するか」を設計する話から始まります。

要点

  • 何が変わった:EV充電網を、車の台数だけでなく電力系統と同時に計画する研究が出た。
  • なぜ重要か:V1Gだけでも、充電設備と発電・系統費用を下げる余地が大きい。
  • どんな事例か:欧州を対象に、充電インフラとエネルギーシステムを一体モデル化した。
  • 日本にそのまま使えない理由:日本は配電制約、駐車時間、料金メニュー、集合住宅比率が違う。
  • 次に見るポイント:V1Gを料金・アグリゲーション・配電計画へどう接続するか。

充電器の数より、充電する時刻が効いてくる

変化は、EV充電計画を「充電器を何台置くか」から「どの時間に、どの場所で、どれだけ充電を動かせるか」へ移す点です。

Nature Energyの論文は、欧州の充電インフラ目標が一律の目安に寄りやすく、V1GやV2G(車の電池から電力を系統へ戻す方式)の柔軟性を十分に見ていないと指摘します。モデルでは、V1Gがシステム費用削減の大半を取り、V2Gの追加効果は最大25億ユーロ、約4,375億円(1ユーロ175円換算)程度にとどまる可能性が示されています。

欧州事例で見えたこと

Before(従来の見方):EV普及に合わせ、一定の台数・距離基準で充電器を増やす発想が中心でした。

施策(今回の研究):充電設備の費用も含め、V1G、V2G、制御なし充電を欧州エネルギーシステムモデルの中で競わせました。

After(示唆):V1Gは多くの費用削減を取り込み、インフラ必要量も減らし得ます。一方、V2Gは価値がゼロではないものの、追加投資や車両利用者の制約を考えると、最初の本命とは限りません。

欧州事例から、日本で分けて考えること

論点欧州で示されたこと日本で置き換えて見るなら
充電時刻V1Gが大きな費用削減を担う夜間、昼の太陽光余剰、夕方ピークを分ける
配電網充電設備と系統を同時に見る低圧・高圧の混雑地点を先に地図化する
車の使われ方V2G効果は追加的に小さい可能性通勤車、営業車、社用車で滞在時間を分ける
料金設計柔軟性が価値を持つ時間帯料金、DR報酬、充電事業者の契約をそろえる
データ連携モデル内で充電需要を扱う充電器、車両、配電設備のデータをつなぐ

日本で考えるなら、V2Gの前にV1Gを測る

日本で同じ結果になるとは限りません。集合住宅の充電、狭い道路、配電線の余力、再エネの地域差が違うからです。

ただし、示唆は明確です。双方向充電の制度や機器を待つだけでなく、普通充電の時刻を動かすだけでどれくらい混雑を下げられるかを先に測れます。これは配電投資の先送り、再エネ余剰の吸収、料金メニューの設計に直結します。

日本で分けて考えること

  • 配電計画:充電器設置候補と低圧・高圧混雑を同じ地図で見る。
  • 料金設計:時間帯別料金だけでなく、充電事業者への制御報酬を考える。
  • 車種別運用:家庭用、社用車、物流車で滞在時間と制御可能時間を分ける。
  • データ連携:充電ログを配電計画に使える粒度へ整える。
  • 段階設計:V1Gで効果を測り、必要な場所だけV2Gを検討する。

結論:まず「戻す」より「ずらす」を測る

EVは電力不足の原因にも、柔軟性の資源にもなります。日本で最初に見るべきは、V2Gの大きな構想より、V1Gで充電時刻をどこまで動かせるかです。


用語ミニ辞典

用語意味
V1GEVから電力を戻さず、充電開始時刻や出力を調整する仕組み。
V2GVehicle to Grid。EVの電池から系統へ電力を戻す仕組み。
DRデマンドレスポンス。需要を一時的に下げたり移したりする仕組み。
配電網需要家の近くまで電気を届ける低圧・高圧の電線や設備。
系統柔軟性需要や発電の変動に合わせ、電力システムを動かせる余地。

出典:

  • Nature Energy「Coordinated planning of European charging infrastructure and energy system for optimal V1G and V2G deployment」(2026-07-14)

出典・参考情報

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